日々、家事使用人として働く私は、
女性の働きのありようを家庭のなかから眺め、
考えがちである。(中略)
けれどもそんな、トマソン的な見立てだけでは
とりこぼされてしまうものがあるともおもう。
(近代ナリコ)
主婦のおもしろさは、その立場性や
生活・労働の割り切れなさにある。
一人の男性において、「労働者」と「父親」は割り切れる。
しかし、「主婦」と「母親」は割り切れない。
「キャリア女性」にはオンとオフがあるが、
「主婦パート」は地続きである。
(村上潔)
去年、近代ナリコさんの『女子と作文』(本の雑誌社)のデザインを担当しました。
http://www.webdoku.jp/kanko/page/9784860112431.html
「アンアン」創刊号に掲載された大橋歩のエッセイから始まり、
1980年代「オリーブ」の読者投稿欄、
スクラップブックに貼り込まれた大正モガたちの(本物の)ラブレター、
夭折の女性詩人・左川ちか、安井かずみ、落合恵子など、
戦前から現在までの「女子本」を通じて
女性たちの声を蘇らせる、類のない読書エッセイ集です。
最後に、昭和の主婦による作文を紹介したのちに、
近代さんはこう結んでいます。
妻たちによる二冊の本をみていて思うのは、書くという行為は、
いやがおうにも孤独を扱う作業だということである。
孤独と向き合うためであろうが、孤独から目をそむけるためであろうが、
孤独に無自覚であろうが、それは同じことである。
それは今日、ブログやSNSによって、誰かと〈つながり〉を持つことが
容易になったからといって、消えてなくなるようなものでもない。
むしろ、あらゆる手続きを一足飛びにして、誰しもが表現し、
発信することができるような世の中でこそ、
私たちは、孤独の扱いかたの難しさを、
かつてないほどに突きつけられているのだろう。(『女子と作文』)
この本の続き、といえるかもしれません。
家政婦として働きながら、
「女性の生活と表現」をテーマに
文筆家/編集者として活動されてきた近代さんと、
主婦のありようとその働きについて研究されている
村上潔さんとのトークが開催されます。
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第76回 西荻ブックマーク
女子と作文・主婦と労働
2014年1月26日(日)
16:30開場/17:00開演
会場/西荻窪・今野スタジオマーレ
出演/近代ナリコ・村上潔
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詳細:西荻ブックマーク
告知用小冊子のデザインも担当しました。
イベントの紹介文のほか、
村上さんによる「主婦の割り切れなさと向き合う」(『週刊読書人』2945号より転載)と、
近代さんによる「家政婦は見た?」(書き下ろし)が掲載されています。
(冒頭の二つのテキストはこの冊子より引用)
以下よりPDF(324KB)をダウンロードいただけます。
当日、イベントには参加できなくとも、
女性の書くことや働くこと、生きかた、主婦的状況について
ご興味のあるかたは、ぜひご覧になってみてください。
(または、ご興味ありそうなかたに
おしえていただけますとうれしいです)